2020年02月20日

たおやかな曲線 (40)

茂は自分の前に立ちつくす波江の下着姿を呆然として見上げているばかりである。
世に溢れている数多(あまた)の若い女の、これ見よがしの裸体の映像を目にして興奮したこともあるが、今茂の目の前にあるのは、そうした大衆向けの薄っぺらな表情の小娘の青い姿態とは違って、圧倒的な迫力を持って息づいている、成熟した女の艶めかしい柔肌も露わな下着姿である。
その肉感的な魅力に思考力は奪い取られ、茂は痴呆のようになって波江の佇む姿に見惚れているのである。
だが、男の反応はそれだけではない。波江が懼れたように、衣服を脱いでゆく女の躍動する肉体が若い男の野性を目覚めさせ、性器はむくむくと狩猟の態勢を整え終わり、どのように獲物に近づき仕留めようかと狙い澄ましている。
茂は四つ這いになって徐に波江の足元へ近づいて来た。すると波江は、日頃の麗しい青年がまるで大蜥蜴のように迫って来るのを、ただ大きく目を見開いて見守るだけで、凍りついたように立ち竦んでしまった。
茂は這い蹲(つくば)ったまま波江の両足に取り縋った。そして、それを両の腕(かいな)に抱きかかえた。ややあって、次いで顔を腰の方へ擦り上げて行くと、同時に両手を下着の内側に差し入れて、膝から太腿へと撫であげて行く。
波江は声も無く、なされるがままに身を任せている。
しかし、茂が下着の裾を捲(めく)り挙げて、露わになったパンティーに顔を押しつけようとした時、はっと我に返り、両手で茂の胸元を強く突っ撥ねて動きを押しとどめた。
「駄目! いけません。これ以上続けてはなりません。いいですか、茂さん、わかりましたか」
波江は恐ろしくなった。
(やはりわたしが懼れた通りになってしまいそうで怖いわ。茂さんの若い欲望に火を点けてしまった。その火は燃え盛って、もう容易(たやす)く消し止めることができないかもしれない。こんなにもう鼻先をパンティーに押し付けんばかりの勢いを弱める気配もない。もしわたしの躰の湿っている所を茂さんが気づいたら、わたしのことを一体どう思うかしら。わたしの欲情した女の性(さが)に同情して優しい言葉を掛けてくれるのかしら。それとも蔑みの笑みを泛べて力尽で犯そうとするのかしら・・)
波江が瞬時に思い巡らした茂の行動の予想とは違って、茂は全く言葉を発する余裕も無く必死になって、冷笑どころか哀願するような眼差しで波江の顔を覗き込み、ひたすら波江の肉体に取り縋って愛撫を繰り返すのに夢中であった。




(続く)

































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2020年02月13日

たおやかな曲線 (39)

「ね、茂さん、お願い。せっかく贈り物をしていただいたのに、これでは皺だらけになって台無しにしてしまうわ。脱ぎますから、手を離してくださいませんか」
茂はこの言葉にはっとして、無我夢中の手の動きを止め、顔を見上げて今度はじかに波江の目を見つめた。大きな黒い瞳が潤んだように、心なしか哀しみを湛えている。
若者はその場に膝を崩して座り込み、年上の女が真新しい靴を脱いで、それをストゥールの傍らに揃えて置くのを、静かに目で追っている。
女は次いですっと背を伸ばし、両腕を大きく首の後ろへ回し、ワンピースのジッパーに指を掛けた。程よく肉の付いた白い二の腕の裏が表に露わになって、それが茂には女の媚態を見せつけられたように見える。
女は一瞬生真面目な表情を造り、長い腕(かいな)を駆使することに集中したかと思うと、一気に難無くジッパーを引き下ろしてしまった。
なだらかな丸みのある両肩の線が現れたかと思うと、肩に掛かっていた短い袖から両腕を次々にするりと引き抜いた。そして肩から外れたワンピースを徐々に押し下げて行き、最後に裾を引き降ろすと、皺にならぬよう気をつけながら足元で衣をまとめ、慎重に腰を屈めて両脚をそっと抜き去った。波江は脱いだワンピースを丁寧に折り畳んで、ピアノの上に置くと、茂の方へ躰の正面を向けて直立した。
白い下着の裾は膝上で終わっている。乳当ての付いた下着なので、波江はブラジャーを着けていない。下着姿にいたたまれないのか、左手を胸に差し渡して両乳房を覆い、右掌(てのひら)を股間に当てて、恥ずかしげに顔を俯かせている。
波江は不安だった。ここまで譲歩して今は茂の攻勢を押しとどめているようにみえるが、果たして茂は追いつめた獲物の哀れな姿を見て、冷静さを取り戻してくれるだろうか。恐らく若くもないわたしのような女の下着姿など幻滅するばかりで、興醒めして放免してくれるのではないだろうか。
こういう期待がある一方で、ついいましがた、茂は洗い清めていないわたしの裸足にすら興奮を示していたことを思うと、薄物の短い下着から覗ける女の躰が却って茂を挑発して、のっぴきならない状況に陥る羽目にならないとも限らない、と懼れもする。




(続く)
































posted by maimizu-koh at 11:25| Comment(0) | 小説 | 更新情報をチェックする

2020年02月07日

たおやかな曲線 (38)

波江の片足先がそっと現われ出て来る。またもや行儀よく並んだ足指の列の悩ましい形に茂は烈しい欲情を煽られ、我を忘れて両手でその片足全体を包み込んだまま脛に顔を押しつけて頬擦りする。
「あっ! 茂さん、おやめになって。・・わたし、恥ずかしいわ、足を洗って来なかったのよ。乾いたタオルで拭いただけなの。・・・あゝ! あなた足指まで舐めようとなさるの?・・だ、駄目よ! いけないわ、汚いじゃないの・・・」
波江が嫌がって身を捩ると、まだ靴を履いている左足がぐらぐらと不安定に揺らぎ始める。倒れまいとして波江は思わず茂の肩に右手を置いて縋った。
青年の頼もしい肩の肉付きを感じて、たちまち波江の女の情感は喚び起こされ、躰の中に拡がり漲った。それだけでおさまらず、女らしい情感に欲情が入り交じり、波江の顔には切なげな悶えの表情が泛びあがる。
屈み込んでいて不意に肩を掴まれた茂は、その突然の振る舞いがいったい何のためなのかと訝しがって、波江の真意を探るように姿見の中にあるその顔に目を遣った。
するとそこに見えたものは、いままで茂が決して目にしたことのない波江の、苦悶の、切々として悩ましい女の顔だ。
もはやまわりくどい理性に従うなど無用のことだと、茂の躰が叫んでいる。物狂おしく男根はそそり立った。抑えつけようもない欲望が駆り立てるままに、左手は波江の脹脛(ふくらはぎ)を伝って膕(ひかがみ)から太ももまで伸びて行った。
もう一方の手も波江の右足から離れて、ワンピースの上から腰を抱き締めてくる。服の生地を揉みくちゃにするほど激しく、波江の肉体の弾力を確かめるかの如く撫で回す。
このように右手が傍若無人に振る舞っている間に、狡猾な左手は更に内腿の奥を狙って指を這わせて来る。
波江は既にじわっと潤ってきたデルタの湿りをパンティ越しに覚られる恥辱を何としても避けたい一心で、力では勝てない茂の欲望の一途さを取りあえず逸らして、勢いを削ぐ方途を探ろうとした。




(続く)





































posted by maimizu-koh at 14:39| Comment(0) | 小説 | 更新情報をチェックする